吉野の桜

はじめて吉野山の桜を見た。テレビや雑誌でそのようすはなんとなくわかっているつもりだったが、実際に見るスケールの大きさはフレームの中からは伝わらないことがわかった。みごとなものだ。吉野の花見=混雑ということで、何も休みの日に好きこのんで混雑するところに行かなくてもと思うかもしれないが、行ってみないとわからないこともある。吉野山の桜は約3万本。山すそから順に下千本、中千本、上千本、奥千本と続き、いずれも一目で千本が見えることから「一目千本」と呼ばれるらしい。画像はは吉水神社の入り口から見る一目千本。デジカメで撮ってしまうとフレームの外が切れてしまうがわたしの視覚の限界までピンクの山が広がっている。ちょうど中千本、上千本が見頃だった。

吉水神社の入り口から見る一目千本

金峯山寺の本堂である蔵王堂前の四本桜もみごとだ。金峯山寺も今回はじめて行ったのだが、満開の四本桜を前景に見る蔵王堂は優美さと威厳を漂よわせている。蔵王堂には秘仏の本尊の金剛蔵王権現が安置されている。よく聞く権現さまというのは仏教の仏が仮の姿で現われたもので、役行者が吉野の金峯山で修業中に弥勒菩薩、釈迦如来、千手観音菩薩の三仏の化身とし現れたと伝えられる。つまり蔵王権現は三仏の合体したもので、安置されているのは弥勒菩薩(左尊)、釈迦如来(中尊)、千手観音菩薩(右尊)の三体の仏像だ。定期的な開帳ないが、2004年に紀伊山地の霊場と参詣道がユネスコ世界遺産に登録されたのを記念して一年間開帳された。

金峯山寺蔵王堂と満開の四本桜

宿坊として有名な東南院の多宝塔を満開のしだれ桜を前景に見る。このアングルも雑誌で見慣れているのだが、かなりの人出があるにもかかわらず、静かな時間が流れる不思議な空間だった。

多宝塔としだれ桜

東南院のしだれ桜と多宝塔の背景に広がる千本桜は圧巻。このころにはパステルピンクの山に目がなじんできた。天気にも恵まれかなり遠くまで見渡せる。

東南院から見る吉野の山

その他、天武天皇夢見の桜の櫻本坊(さくらもとぼう)、吉水神社、大和三庭園のひとつ竹林院や吉野山の住人の菩提寺であった善福寺などを巡った。本来ならばもっと自分の記憶の中に留めておきたいところなのだが、デジカメのデータにしてしまう悲しい現代人は、後日データを整理して思いを巡らすのだろう。いまこの一瞬の新鮮な時間はもう二度と踏み直せないことをもっと意識して日々を送ろうと思う一日だった。

その他の写真はここ