きのうはすみれで大満足だったのだけれど、きょうは妙なタイ料理屋に入ってしまった。土曜の夜8時半に客がひとりもいない店には入ってはいかんという教訓を忘れていたわけではないが、魔がさすこともある。
しかし、もう一度チャンスがあったのだ。店の中には店番をしている小学生くらいの子供がひとりいるだけだ。そこで引き返せば良かったのだ。さらに、店内にベビーカーが。この時点でもう先の悲劇は目に見えていたのだ。
メニューを見るとコースはなく全部単品の料理のみだった。値段は普通のレベル。わんこにあまりたくさん頼まないようにと被害を最小限にくい止めるべくお願いをした。豆腐と春雨のスープ、豚の串焼き、鶏とカシュナッツ炒め、エビと野菜炒めの4品。多すぎだ。
子供が注文を取りに来た。店にはほかに誰もいないから、料理もこの子供が作るのか。子供が厨房と思われる奥の部屋に入っていった。ほんとうは子供ではなくてタイの白木みのるなのかもしれない。
厨房はまったく見えないのだが、しばらく包丁で野菜か何かを刻む音がしていた。トントントンと子供にしてはなかなか手際の良い包丁音だ。包丁の音がやんだと思ったら、子供が外に出て行ったので、てっきり下準備だけやって、実際の炒めたり煮たりは親がやるので、親を呼びに言ったのかと思って少しほっとしたのもつかの間。子供はスーパーの袋を持って一人で帰ってきた。材料を買い足しに行ったのだ。
子供がに厨房に戻り、ガスをつける音がするが、炒め物などを出す店特有の強火のガスではなさそうで、ご家庭用のコンロのチチチという点火音がした。炒め物を始めたらしいが、見えなくても音を聞いただけでもうダメさが期待できた。
火力の弱い火で長時間炒めた炒め物は肉は硬く、野菜はシャキッとしていない。熱々じゃないし、皿も温めていないから料理が冷めてしまって寒々しい。最初に出てきた春雨と豆腐のスープも別の鍋で作ったものを冷たい土鍋に移し替えているため熱くない。飢えた猫舌の人でもすぐにがつがつ食える温度でとても気が利いている。さらに、普通はさめないように携帯燃料が置かれるのだが、それもない。スープが煮詰まらないから、ほっといても冷めるだけで安心だ。スープを少し飲んで、鶏肉とカシュナッツの炒め物を少しだけ食べたが、味が濃い。このひと皿でご飯が2杯は食える。
大宮のテープタイのトムヤムクンは最高だった。
テープタイは埼玉県唯一のタイ王国商務省認定レストランで、日本人向けにアレンジされているが食材や調味料なども空輸しているため本場の味が堪能できる。人気の店で常連さんも多いが、常連じゃない客にも同じように接してくれる、とても良い店だ。それにお値段も安いし、なにより大人が料理を作るし、厨房とフロアの担当は別だし、次々とタイミング良く料理が出てくる。まるで天国と地獄。
2品がきただけで、そのあとは、わたしらの後に入ってきた客のカレーを作っているようだ。コンロが1つしかないのかもしれない。あっても2つだ。思った通り、別の客のカレーが先に出てきた。先客のわたしらは後回しか。1品しか頼まない客と、4品頼んだ客の食べるペースを考えれば、カレーを暖めながら、わたしらの注文を同時進行でつくるのが常識だ。2品だけ出して、その後の2品を30分後に出されたら、食べる気が失せる。カレーの客を30分も待たせたくなかったのだろうが、料理というのは、食べるタイミングを見はからって出すものだ。わたしらの2品をいっぺんに出さなくてもいいから、料理はとぎれないように出すべきだ。君の店はお客にお代をいただいているのだよ。混みあってる時ならしかたないが、客がいないのだからそのくらい考えるべきだ。まあ、子供には無理な注文だろうし、入ったほうも自業自得だ。
30分後に豚の串焼きとエビと野菜炒めが出てきたが、もうわたしは、鶏肉とカシュナッツ炒めの油でもたれてしまい、気持ちが悪くて食べることができなかった。気の毒だが同居人に残りを全部食べてもらった。気持ちが悪くて水も飲めない状態で、早くこの店を出たかった。同居人に早く出ようと促して外に出た。お会計はレジスターはなく電卓で計算していた。
外で待っていてもなかなか同居人が出てこない。そうしたら子供がとび出してきて、どこかに走って行った。店に戻ってどうしたのか聞くとおつりがないらしい。
最後まで笑わせてくれる。子供はショップ99で何かを買ってお金をくずしてきたらしい。ということは、さっき買い物に行ったのもショップ99なわけだ。ここの材料はみんなショップ99のものなのか。旬のおとうさんに言わせればお代はいただけない。この店の名前はタイレストラン「トンくん」（http://ton.kun.jp/）。
ちなみに、連れは、貴重な体験でしばらく話題にことかかないと結構喜んでいた。わたしは修行が足らないから、こんな考え方ができるほど人間ができてない。
すでに閉店したようです。
