早起きは三文の得というけれど、きょうは早起きをして竜神大橋近くの慈久庵に向かった。ラストオーダーが14時半なので、14時には到着したいと途中休憩もせずひた走り。予定よりやや早めの13時半に到着した。日立南太田I.Cより30分ということだが、下道に入ってから30分では少し無理なので、遠方より行く場合は時間の余裕を持っていくほうがよいかと。
駐車場からのアプローチの店舗裏の階段を登って玄関へ。入り口では、はきものを脱いでスリッパに履き替えます。入り口のサインを見落とさないように。ご主人ひとりの場合もあるので、出迎えを期待してはいけない。案内があるまでウェイティングスペースで待っていると、メニューとおしぼりを渡しされ、好きな席に座るように案内される。駐車場に1台横浜ナンバーの車が停まっていたが、ほかに客は一組。奥の窓際の席に座り外の景色を思わず見てしまう。店主が電気ストーブを持ってきてくれた。そばがき(1500円)、野草天ぷら(850円)、地葱てんぷら(600円)、大盛せいろ(1650円)、鴨せいろ(1800+大盛分550円)を注文。
店主の小川さんは、2002年に東京阿佐谷の慈久庵を閉じ故郷の近くの旧水府村(現在の天下野町)に移りそばの栽培を始めたことは有名で数々のメディアでも紹介されている。阿佐ヶ谷のお店にもうかがっているが、最後の訪問から10年いや15年は経っているだろうか。
まず運ばれてきたそばがき。これはどうしても食べたい。ご主人のおすすめに従って、まずそのままでいただいて思いっきりそばの香りと粗めの感触を味わう。
次に薬味のネギと味噌を絡めていただくとまた違った味わい。まったくもって至福のときです。コースには付いているが、アラカルトで注文するにしても、(大きなお世話かもしれませんが)このそばがきだけは食べる価値あり。
野草の天ぷらは、季節によって内容が変わるが、今回は、スカンポ、ナズナ、ギシギシ。慈久庵の天ぷらは岩塩(南米のものと説明があった)でいただくため衣が薄くサクサク。
そして地葱の天ぷらのそこはかとない甘さ、いくらでも食べられる。お値段もお手頃なのでおすすめの一品。コースには含まれていないのでコース注文のおりには忘れずにオーダーしよう(笑)
大食いなものでせいろと鴨せいろのおそばは大盛りにしてもらった。どのおそばメニューも550円増しで大盛りにしてもらえるというのはお得感がある。
常陸秋そばとは、古くから茨城県下で栽培されてきた金砂郷(かなさご(う))在来のそばを品種改良したもので、常陸秋そば(ひたちあきそば)として1987年に品種登録された。『常陸秋そばは水戸光圀にも献上された』と記述されたログもあるが、1987年に登録されたものを水戸光圀が食べられるわけはなく、献上されたとしたらそれは金砂郷在来のはずだ。単に常陸秋そばというだけでは品種のことを示すのであって、この品種は茨城県を中心に関東地方各地で栽培されている。慈久庵のそばも、常陸秋そばではあるが、そば作りから在来農法にこだわり、旧水府村の協力農家や製粉会社とともに手刈り天日乾燥で栽培し、荒れた畑を再生するために焼き畑も行っている。店主自らが店を休業して種蒔きから刈り入れまでの作業を協力農家とともに行い、生産された常陸秋そばはまさしく特急品。
ご主人が何度も熱いそば湯を運んでくれたので、なんだか奥の遠い席に座ったのが申し訳ない気がしてしまう。客扱いうんぬんという人もいるようだが、ご主人ひとりでかなりの広いスペースを仕切っているわけで、厨房とフロアが専従タイプの店ではないから勘違いしないように。おいしい蕎麦を食べに片道4000円以上の高速代を使って来たわけだから、おいしくいただけることが第一。ホスピタリティはそれほど期待していなかったのだが、ご主人のさりげない気遣いに、客に一番おいしい状態で食べてもらいたいというこだわりを見た。
ちょうど桜の季節でもあり、都会暮らしの我々にとって里山を見ながら静かな時間の経過を食事に費やすのは、なんとも贅沢なことだ。ほんとは帰りの時間など気にしないでいつまでも遠くの景色を眺めながらチビチビとやりたいものだ。ひとりで行くもよし、二人で行くもよし、また家族で行くもよし。天下野の景色とおいしいそばを堪能した。
慈久庵
茨城県常陸太田市天下野町(けがのちょう)2162
0294-70-6290
定休日 水・木曜日(祝日の場合営業・翌日休み)
営業時間 11:30分~14:30分(L.O)
そば作りの作業により休業日があり
駐車場 あり