和歌山道成寺の桜

安珍清姫伝説で有名な和歌山の道成寺に桜を見に行ってきた。清姫伝説は、細かい部分は諸説あるものの熊野詣の途中に一夜の宿を求めたイケメン僧の安珍に清姫が恋心を抱き、娘だてらに夜ばいをする。安珍は熊野参詣の帰りに必ず立ち寄ると約束するも立ち寄らない。安珍に裏切られたと思った清姫がストーカーと化し、毒蛇となって川を渡り安珍を追う。最後に道成寺に逃げ込んで釣鐘の中に隠れた安珍を焼き殺し、自身も日高川に入水自殺をするという悲恋物である。謡曲や歌舞伎、映画など道成寺物と呼ばれさまざまなジャンルで演じられている。

道成寺本堂としだれ桜

道成寺は入山は無料で宝仏殿や縁起堂を拝観する場合のみ拝観料500円が必要となる。今回は春季本堂公開中だったので、普段非公開の本堂内にも上がることができ初代本尊の千手観音像(重文)も見ることができた。宝物殿には国宝の本尊千手観音と日光・菩薩菩薩(すべて国宝)が安置されている。縁起堂では安珍清姫の物語を絵説き説法で聞くことができるが今回は時間がなくて断念。なかなかおもしろいらしいので機会があれば一度聞きたい。

上記画像は本堂と本堂前のしだれ桜。本堂には三十三年に一度開帳される秘仏の北向き本尊の千手観音像が今回拝観した初代本尊と背中合わせの位置に安置されている。前回の開帳が2005年だったので、次回は2038年。自分にとってほんとに大切な人とお参りすると次のご開帳にも一緒にお参りできると言われている。あたしは、前回の開帳にお参りしていないが、33年後と言わず、またいつか一緒にお参りできれば幸せかな。

道成寺三重塔

三重塔は咲き誇る前景の桜や、花見で賑わう境内の喧噪を忘れさせるようにひっそりとしている。

安珍塚

安珍塚は安珍と釣鐘が埋められたと伝えられる、言うなれば安珍の墓。安珍塚と刻まれた石碑と榁(むろ)の木が、悲しげな雰囲気。

二代目鐘楼跡と安珍桜

二代目鐘楼跡と立て札に隠れているが後方が安珍桜。残念ながら安珍桜は花が咲いていなかった。道成寺の初代釣り鐘は安珍清姫伝説で安珍とともに焼けてしまったと伝えられている。それから400年たった南北朝時代に二代目の釣鐘が作られこの場所に鐘楼が再建されるも、秀吉の紀州攻めの時に没収される。現在は京都の妙満寺に安置されている。2004年10月に二代目釣鐘が、420年ぶりにお里帰りして公開されたらしい。

道成寺の入相桜

現在の入相(いりあい)桜は二代目で初代は樹齢数百年ほどで昭和初期の台風で折れてしまったらしい。初代が折れた後にその根本から自生したという。この入相桜は本堂からは少しはなれた場所にあるのだが、初代の入相桜は三十三本の支柱で支えられ本堂の縁側から短冊がつるせたという(伝承)。いわゆる道成寺物もひとつで宝暦9年(1759年)に難波の竹富座で上演され大評判となった安珍清姫伝説にもとづく文楽は、この桜にちなんで「日高川入相花王」と名付けられた。古来より花の王は中国では牡丹、日本では桜だったことから「花王」と書いて「さくら」と読ませたそうだ(道成寺の入相桜の由来より)。イチゴの王はあまおう。

道成寺仁王門から見た門前釣鐘まんじゅう

おきまりコースで帰りに門前に多数ある釣鐘まんじゅうを試してみる。あたしは階段を下りてすぐ右手にある松屋本舗の白あんと黒あんをひとつずつ買って試食してみた。人形焼きを想像していたが、皮がうすく焼きたてのベビーカステラといったところか(笑)おいしくいただきました。

道成寺は天音山千手院道成寺(てんのんざん・せんじゅいん・どうじょうじ)が正式名で天台宗の寺。本尊は千手観音菩薩。能楽などの名作劇として長く伝承される重要文化財で能楽師や歌舞伎役者は一度は訪れるという。

和歌山県日高郡日高川町鐘巻1738。日高川町鐘巻という地名からも伝説の世界が広がる。

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