松山名物鍋焼うどん

松山には鍋焼うどん専門店というのがあるらしい。大街道という表通りから1本入ったところにその店はあった。「ことり」と「アサヒ」というユニークな店名とともに「鍋焼うどん」という看板が出ている。どちらも暖簾がなく普通の民家風の外観だ。我々は湊町側から路地に入ったのでまずアサヒを見つけ店の前を通り過ぎて右にことりの看板を見つけた。2店は50メートルと離れていない。どちらに入ろうかと迷っていると、ちょうどことりのほうから子供を連れた若いおかあさんが出てきたので、店の中をのぞいてみるとたいそうなにぎわいだ。とりあえずこちらに入ってみることにした。

鍋焼きうどん専門ことり

店内は椅子席と座敷でそれほど広くはない。昼時なので、ほぼ満席状態だったが、座敷のほうに案内された。メニューは鍋焼きうどんとおいなりさんのみでベリーシンプルで期待通りだ。なべ焼うどんは、アルミの鍋でひとつずつ作っている。店員さんの多くはおじいちゃんおばあちゃん。オーダーが先か作るのが先かは、不明だが、まもなくおいなりさんと鍋焼きうどんがやってきた。ここでお会計。だからレジも必要ない。

鍋焼きうどん

このアルミの鍋なのだが、子供の頃母の田舎の大分のうどん屋で出前の鍋焼うどんを頼んだときにこのようなアルミの鍋に入っていた。東京の鍋焼きうどんはほとんどの店が土鍋で、たまに鋳物で手がついたものを使う店もある。

具は牛すじ、きざんだ油揚げ、なると、魚のすり身とタマゴの練り物(名称がわからないが伊達巻き風のもの)、青ネギで、つゆは愛媛風で甘め。甘いことは甘いが昆布と魚系の出汁とのバランスが絶妙。うどんは軟らか目だが主張し過ぎず食べやすい。戦後間もない創業ということらしいが素朴で無駄のない完成された芸術品だ。

おいなりさん

おいなりさんは、東京人としてはやはりローカル色の濃い部分を許容するとしても、シビアに見てしまう。コンビニいなりみたいなものが出てきたら一気に鍋焼きうどんのおいしさも半減してしまうというものだ。だが、すばらしい。この少しつぶれ気味の外観からは想像はつきにくいが、薄味に煮た油揚げも中の酢飯も美味しい。形は関西以西のスタンダードな三角形。東京風の照りの出た濃い味のいなりを好む人でもおいしくいただける。まさに鍋焼きうどん(480円)+おいなりさん(220円)のセットは最強であった。昼12時少し過ぎに来店したのでおいなりさんにありつけたのだが、ほとんどお昼過ぎには売り切れになるらしい。おいなりさんも所望するのであれば是非お昼までに行きましょう。店のオペレーションも含めて感動ものでした。松山のローカル食のキングは、鍋焼きうどんと断言する。
ことり
愛媛県松山市湊町3-7-2
089-921-3003
OPEN 10:00~18:00
定休日 水曜日
駐車場 なし(近隣にコインパーキングあり)